バブル崩壊に端を発し、2008年のリーマンショックを経て、企業による管理職者・中高年へのリストラや解雇は、今日では30代前後の若い人たちにも拡大しています。すでに初期のころに希望退職に応じた人たちは再就職した職場で退職勧奨をうけ、職場に残った人たちも長引く不況の中で何回目かの減給や退職勧奨に合っています。
一方、経済状況や企業の業績とは違った観点、雇用形態にも大きな変化が訪れ、これまでの終身雇用や年功序列といた日本的雇用は平等待遇や能力の評価という言葉の下で、能力主義や成果主義といった評価に置き換えられ、年俸制や新人事制度の導入に伴い、正社員から、非正規雇用の契約社員・派遣社員といった労働形態に変えられようとしています。
経営者が必要なときに必要なだけの労働力を利用できるシステム。即ち、いつでも労働者を解雇できるシステムに変わりつつあるのです。これは大変危険なことです。
ですから、貴方にとっても減給や降格、退職勧奨や解雇は決して他人ごとではないのです。
☆「退職届」は、絶対書かないこと
*会社は従業員に退職届を書かせて、自己都合退職するように仕向けてきます。
解雇した事によるトラブルの回避や解雇予告手当や会社都合の割増退職金を支払いたくない等の会社側の思惑がそこにはあります。
*自己都合退職に追い込むのは、通常会社都合よりも退職金が安く、また従業員が自ら退職することで会社の経営責任問題を避けようという姿勢の現れです。
☆冷静に会社の言い分を聞く
退職勧奨なのか解雇通告なのか、配転、出向、転籍はそれぞれ対処が異なる
「辞めてくれないか」、「関係会社へ行ってくれないか」等々と言われたら、まず気を静めて、退職勧奨なのか解雇なのか、或いは、配転なのか出向なのか転籍なのかを確認します。更に、例えば解雇の場合なら、普通解雇か整理解雇か懲戒解雇かを開いてみましょう。下記を参考に会社の狙いを把握して下さい。
解雇
(1)普通解雇
本人の原因(勤怠不良、業務拒否等)による場合
(2)整理解雇
重大な経営危機による人員整理。妥当性の目安は下記4要件
(3)懲戒解雇
就業規削の懲戒規定に合致し、社会通念上の妥当性が必要
退職
(4)合意解約
労使合意による雇用契約の終了。希望退職募集による退職等。
(5)自主退職
本人の意思に基く退職
(6)定年退職
定年による退職。
雇用条件変更
(7)配置転換
業務命令による配置の変更。一般的には拒否するのは困難。
(8)出 向
雇用関係は従前のまま、業務上、他企業の指揮監督に移行。基本的に本人同意が必要だが、グループ企業内などの出向を労使協約などで認めている場合もあるので確認が必要
(9)転 籍
従前の雇用関係を終了し、他企業へ移籍。本人の同意が必要。
整理解雇の4要件
【解雇の必要性】
経営上解雇の必要性があるかどうかが問われる。人件費の増減や新規採用、経営状態、株主への配当なども考慮される。
【回避努力】
企業が解雇を極力回避したかどうか。再配置や雇用調整、希望退職の募集などを事前に行ったかどうかが問われる。
【選定基準の妥当性】
客観的に見て合理的な選別基準があり、公正に行われたかが問われる。
【協議/合理的手続きの実行】
事前に労働者または労働組合などに経営状態の情報開示があり十分に協議がおこなわれていたかどうかが問われる。
☆褒め、説得、脅しにのらない
*最初は、あなたを褒めて「新事業展開にあなたが必要だ」等といって関連会社に追い出そうとしたり、忠誠心に訴えて「会社のために身をひいてくれ」と説得し、次には「解雇になると君の経歴に傷がつく」と脅すケースが多い。
*会社の都合に対し、こちらは生活状況を中心に反論し、「納得できない」、「管理職ユニオンに相談する」等と毅然と反撃する。これだけで会社が、退職勧奨や解雇を取り止める場合もある。
*「辞めてくれ」と言われ、ショックを受け退職届を書く人が多いが、絶対に書いてはいけない。退職届は貴方自らの意思で会社を辞めることである。
*常日頃、「辞めてくれ」といわれた時の対処についてイメージトレーニングをしておく事は有効である。
☆退職届を断るとクビになるのでは
*会社の業績が落ちたからといって、退職届けを断ったことを理由に解雇することはできない。
*成績不良や欠勤が多いなどと難癖をつけ、解雇をちらつかせても、解雇理由が客観的で公正でなければ解雇は出来ない。
*自分から退職届けを書くと合意したことになります。それより、会社から理由なしに、或いは薄弱な理由で解雇になった方が、後の交渉や裁判が有利に運ぶ可能性がある。
*管理職ユニオンは「退職届けは絶対に書かず」寧ろ「解雇通知を貰うこと」をお勧めしています。
*注意が必要なのは、労働者自身の不正行為や犯罪行為、或いは理由のない業務命令拒否などで会社に解雇理由を構成される事です。
一度書いた退職届も撤回できる場合
*退職届けを書いた理由が、会社による虚偽の説明であったり、長時間に渡って隔離された場所で強要されたような場合は無効を主張できる場合があります。その場合は一刻も早く撤回の意思表示を文書で会社に通告しましょう。
*ただ、家族に相談して翌日書いたような場合の撤回は困難です。「家族に相談」という言葉も禁句です。十分に判断する余裕があったとみなされるからです。
☆管理職ユニオンにできること
*本人の希望に沿った解決を目指します。しかし、本人の希望が全て実現可能だということではありません。
*本人の希望に沿った解決を目指すわけですから、相談員に希望を明らかにすると同時に、本人にとって都合の悪い事実も正確に伝えることが肝心です。
*取り組みの第一歩は、会社に貴方が管理職ユニオンの組合員になったことを通知し、団体交渉を申込み、話し合いでの解決を目指します。会社は労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否できません。この事は、個人で話し合いを申し入れる場合との決定的な違いです。
*交渉が難航したり、会社が団体交渉を拒否してきた場合は、憲法で保証されている宣伝活動や、会社への直接申し入れを行う、或いは、地方労働委員会に訴えるという方法をとります。
*取り組みの主体はあくまで貴方です。ユニオンに加盟したからには、担当者が解決してくれるだろうという期待をしてはいけません。管理職ユニオンは「指導も救済もしない」「自己決定責任」を重視する労働組合です。
*貴方が管理職ユニオンに入ったことを知ると、会社の同僚が声援してくれる場合も、逆によそよそしくなる場合もあります。奢らず且つ弱気にならずに日常と向かい合いましょう。
*弁護士が必要になった場合は、労働問題に詳しい弁護士を紹介します。
☆解雇と退職金、解雇と予告手当、解雇と再就職
*正当な懲戒解雇の場合、退職金や解雇予告手当が貰えない場合があります。また雇用保険の受け取りにも給付制限期間が発生します。
*整理解雇の場合、会社都合ですから自己都合と比較して条件が良い場合が多いです。また雇用保険も、自己都合退職の場合(退職から3か月間は不受給)と違い、翌月から受給対象になります。
*「懲戒解雇になる前に退職届けを書けば退職金を支払う」等という言葉に惑わされてはいけません。
*正当な懲戒解雇を除けば、解雇が再就職に影響することはありません。ユニオンでは問題の解決条件に、再就職の耶魔をしないという事を会社に約束させます。
☆組合結成と管理職ユニオン
*組合を自分で作ることも可能です。二人以上集まればすぐできます。
*ただ、せっかく作った労働組合も使いこなせなければ意味がありません。
*とりあえず、自分一人でも管理職ユニオンに加盟して労働組合員としての権利を手にしてください。
*「あの人が入ったら」とか、「何人か集まったら」入ろう等と考えると時期を逸したりし、うまくいきません。まず貴方が入って、「私は入ったので、あなたも入らないか」と言ったほうが成功します。
*管理職ユニオンは、一人でも複数でも、管理職であっても無くてもいつでも加入できます。管理職は労働組合に入れないというのは間違った考えです。
☆会社が平穏な場合
*今リストラが行われていなくても、いつ起こるかわかりません。起こってからよりも起こる前に対処しておく方が有利です。いざという時の保険と考えて加入している組合員も大勢います。
☆解雇や退職についての法律
※労働契約法:第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
*労働基準法:労働条件についての最低限の基準を定めた法律です。この基準以下の雇用契約は無効です。
・〔解雇禁止〕業務上の負傷、及びその療養期間、産前・産後の所定期間内の解雇は禁止されています。
・〔解雇予告〕解雇の場合、最低30日前の予告、1か月以上の賃金を支払う事を義務づけています。しかし、所定の解雇予告通知、又は、予告手当の支給をしたからといって解雇が全て正当化されるわけではありません。あくまで、正当な解雇理由の存在が前提です。
*労働組合法:労働組合の団結権、団体交渉権、争議権はこの法律を根拠にしています。
*男女雇用機会均等法:女性であること、結婚・出産を理由とした退職勧奨を禁止しています。



