東京管理職ユニオンでは、電話、メール、事務所での面談相談などで年間1,000件以上の相談を受けます。
相談は、相談者にとって深刻な問題であるのと同時に、ユニオンにとっても労働者が現場でどのような問題に直面しているのかを知る大切な機会です。
18年に及ぶ相談活動は、管理職者のリストラ、職場いじめ、職場でのメンタルヘルスケアの重要性などを浮き彫りにしてきたといえましょう。
今回から定期的に相談事例を紹介し、ホームページをごらんいただいている皆さんに、ユニオンに寄せられる相談をお伝えします。相談の事例を通じて、現在の労働環境や多くの労働者の悩みの実情を知っていただきたいからです。参考にしたり、時代の一端をご理解いただけたら幸いです。
尚、プライバシー、公平性の観点から、個人名はもちろん、企業名も伏せてのご紹介といたします。記載の相談事例についてのお問い合わせにも応じられません。ご承知おきください。
(事例1)ロックアウト解雇
アジア系IT企業A社のケース
A社は、金融システムの導入や運用を行っている外資系企業です。清水直美さん(仮名)は、A社で日本にある外資系金融機関などにシステムを導入する仕事をしていました。清水さんは語学が堪能で、技術もしっかりしており、取引先や同僚の評判もよかったのですが、決算前の2009年2月頃、A社の上司から「あなたの仕事はない」と宣告されてしまいます。仕事をがんばり過ぎて体調を崩していたのを狙われた格好で、事実とは反するのですが、取引先や同僚から苦情があったなどと、「あることないこと」ではなく、「ないことないこと」を言われました。清水さんが上司に、「私は仕事がしたいです」と言ったところ、上司は、清水さんから会社に入るのに必要なセキュリティカードを取り上げてしまいました。清水さんは、まだ解雇もされていないうちから会社に立ち入ることができなくなり、そのショックで通院・加療を余儀なくされました。さらに酷いことにA社は、心の準備も物質的な準備もできてない清水さんを無理矢理会社から追い出すだけでなく、デスクやロッカーにある清水さんの私物に勝手に手をつけて、ダンボールに詰め込んで家に送りつけました。
ロックアウト解雇に遭った清水さんは、困り果てて東京管理職ユニオンに加入し、会社に団体交渉を申し入れました。
しかしA社は、団体交渉の申し入れを無視して、何の返答もしませんでした。これは極めて珍しいケースです。日本の労働組合法では、その会社の労働者が1人でも労働組合に加入していれば、その労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否してはいけないと定められていますから、日本の法令を無視した対応といえます。
2度にわたる団体交渉の申し入れを無視したため、3回目に警告書を送り、東京都労働委員会に斡旋(あっせん)を申し立てました。斡旋とは、労使紛争に際して、労使どちらからも申し立てできる調整制度です。労働委員会から相手方に対して、話し合いに応じるよう説得します。話し合いになれば、労働委員会において斡旋員が労使間を仲介し、争点を整理し、助言しながら解決をはかります。
これでも応じないようなら、団体行動権に基づく争議行為をおこなうように準備をしていました。準備内容は、不当なロックアウト解雇で従業員を追い出した上に団体交渉を拒否している違法行為をおこなう会社だということを知らせるビラを撒くこと。また大勢の組合員で会社を取り囲み、マイクで情宣する準備もします。マスメディアにも取材してもらうように手配しました。すると、会社から労働委員会に、斡旋を受けると返事がありました。笑ってしまうことに、会社は団体交渉の申し入れ書を受け取っていないと嘘をつきました。2回とも配達証明郵便で出していて、配達されたという証明葉書も届いているので、受け取っていないわけはありません。
結局、斡旋の場で、会社と別室でそれぞれが労働委員会の事務局の方と話をするなかで、解雇撤回を求めました。労働委員側も、これはひどい話だと判断して、会社を説得してくれました。その後、自分たちでは対応できないと考えた経営者が、日本人の弁護士を代理人に選任。この弁護士は法律家として経営者の不法行為をいさめて、解決に向けて経営者を説得してくれました。結果として、解雇は撤回され、会社が清水さんの納得できる金額を解決金として支払うことで、会社都合で退職することで合意。無事に解決することができました。



